本記事は, 下記2記事の続きである.
[ 過去記事:
岐阜市, 岐阜県が予定している大規模公共事業 ]
[ 過去記事:
BIS規制 (銀行の自己資本比率規制) の研究 ]
なぜ, 市民, 県民が熱望しているわけでもない大規模公共事業が行われるのか?
岐阜市
公共事業 |
費用 |
備考 |
新市庁舎 |
約200億円 |
2020年までに完成 |
メディアコスモス立体駐車場 |
899,164,800円 |
2015年11月市議会 工事請負契約 可決済 |
岐阜県
公共事業 |
費用 |
備考 |
新県庁舎 |
約500~550億円 |
2018年度入札, 工期期間約36ヶ月 |
森の恵みおもちゃ美術館 (建物) |
3億5,000万円 |
2016年10月県議会 補正予算計上済 |
森の恵みおもちゃ美術館 (駐車場) |
10億円 |
2016年10月県議会 補正予算計上済 |
岐阜市, 岐阜県, 共に大規模公共事業を予定している.
岐阜市は
合併特例債の活用期限が2020年なので, 市長は2020年までに工事を終わらせるために急いでいる.
最近の岐阜市の実績でいえば, メディアコスモス (総事業費: 125億円, 2015年7月開館) , 長良川うかいミュージアム (総工事費: 約14億円, 2012年8月開館) を建設した.
上記の大規模公共事業は, 岐阜市民, 岐阜県民が熱望していたわけではない.
ではなぜ, 大規模公共事業が行われてしまうのだろうか?
答え: カネを貸す奴がいるから
大規模公共事業が行われてしまう最大の原因は, 「カネを貸す奴がいるから」である.
カネが無ければ, 首長, 地方自治体議会議員, 地方自治体公務員, 建設会社がどんなに熱望しても大規模公共事業を行うことができない.
銀行は, 安全な融資先に, カネを大量に貸したくて貸したくて仕方が無い.
国・地方公共団体への融資は, バーゼル2 (現行の銀行の自己資本比率規制) ではリスク・ウェイト0%として計算されるため, 事業法人への融資 (リスク・ウェイト: 格付けに応じ20~150%, または格付けを使用せず一律100%) , 中小企業・個人への融資 (リスク・ウェイト: 75%) よりも断然安全とされている.
つまり, 銀行は, 事業法人や中小企業・個人よりも, 国・地方公共団体に大量にカネを貸したいのである.
これはもはや, 銀行の本分を忘れているといわざるを得ない.
大規模公共事業の責任追及は, 首長, 地方自治体議会議員, 地方自治体公務員, 建設会社に対してバッシングという形で行われることが多いが, 銀行はほとんど責任追及されることが無い.
もちろん, 首長, 地方自治体議会議員, 地方自治体公務員, 建設会社は悪いのだが, 最も悪いのはカネを貸した銀行であるということを認識して頂きたい.
【 バーゼル2 信用リスク 計算式 】
信用リスク・アセット額
= Σ ( 与信額 (保証等オフ・バランス取引含む) × 各リスク・ウェイト )
与信先区分 |
バーゼル2 リスク・ウェイト |
国・地方公共団体 |
0% |
政府関係機関等 (うち地方三公社) |
10% (20%) |
銀行・証券会社 |
20% |
事業法人 (中小企業以外) |
(格付けに応じ) 20~150%
または
(格付けを使用せず) 一律100% |
中小企業・個人 |
75% |
住宅ローン |
35% |
延滞債権 (※) |
50~150%
(引当率に応じて加減) |
株式 |
100% |
(※) 延滞債権は, 3ヶ月以上延滞が発生している債務者に対する与信.
[ 情報源: バーゼル2(自己資本比率規制)について /
http://www.fsa.go.jp/policy/basel_ii/basel2.pdf ]
2016年12月30日 (金) の日本国債 (10年) の金利は, 0.04%である.
基本的に, 地方自治体発行の債券の金利は, 日本国債 (10年) の金利に連動する.
[ 情報源: 長期金利推移グラフ /
http://www.bb.jbts.co.jp/marketdata/marketdata01.html ]